夜の海岸線9月4日読了時間: 1分星を探しに海岸に来るとポツンと手持ち花火をしている人がいた。じっとりとした風が僕と君のあいだを擦り抜ける。防波堤に擦り寄る波の音。ときおり通り過ぎる微かな車の音。星は見えなかった。目の前の島が煙を吹くばかりだった。小さな静寂。輝くコンビニ。君と手を携え車に乗り込むと右に赤銅色の大きな月を見た。走る車の中、僕たちは明日の別れを口にしないようにヨーグルト味の四角いパックを飲み交わした。
ずっと。涙で前が見えない。 涙なんか出ないくせに。 心では止め処ない涙が流れているのに なぜか飄々と歩いている。 平気なフリして歩いて、過ごしている。 ずっと、ずっと、そうやって生きている。 いつまでも。いつまでも。ふわふわと。
薄氷カーテンの隙間から差し込む薄明かり。 夜が明けるのが早くなった春。 心の薄氷にそっと指をつけて罅を作る。 罅を作るだけのはずが、いつも懲りずに強く押してしまう。 そこにあいてしまった穴を見て、僕は何をしているのだろうと、はっとする。 しかし深夜から明朝にかけてまた穴は埋まっていく。 氷解せずにまた薄く凍り埋まっていくのだ。 そして翌朝、僕はまた懲りずに指で穴を開けてしまう。
月「月が綺麗ですね」と僕は月を見上げて云う。 その日は大きな満月で本当に綺麗だったのだ。 そう云ってから暫く、僕は隣を歩く人が黙っていることに、はっとした。 明治大正時代の文豪の言葉を知っているのであろうか。 そう考えていると隣の人は明日のことを話し出した。 真意のほどは定かでない。 しかし、漱石のせいで意中にない人に突き放された気持ちであった。